MakeMoney.TS プロジェクトとは
JavaScript 開発者の生産性向上を目指す
本翻訳は MakeMoney.TS プロジェクトがおこなっています。
MakeMoney.TS プロジェクトの目的は、JavaScript 開発者の生産性の向上に寄与することです。また JavaScript 開発者の生産性をあげることによってウェブアプリケーションにおける JavaScript 開発者の存在感の向上を目指しています。
MakeMoney とは主にヒップホップおいて頻出する用語で、形而上学的な議論はダサくて軟弱だから、リアルな路上 = ストリートで成り上がることを肯定する、一種のハイプです。本プロジェクトにおいては、エンジニアが肯定すべき価値観は「実装すること、バグを直すこと、コードで金を起業家に稼がせること」と定義し、その実践とサポートを行います。
なぜ MakeMoney にドキュメントの翻訳が必要なのか
マーシャルマクルーハンのグーテンベルクの銀河系に詳しく書かれていますが、ある言語が他の言語に対して優位性を持つのはその「機能」ではなく、その「ユビキタス性」にあると考えています。
つまり現在の英語やドイツ語がラテン語から独立し、今となってはラテン語よりも存在感を持ったのは、聖書が英語やドイツ語といった地方語に翻訳されグーテンベルク活版印刷によって地方語の形で広まったからです。言語を通してアクセスできる状態、アクセスできる人間がさらに情報を作りだす状態。これらの相互作用によって言語は優位性を高めます。
言語がグーテンベルク活版印刷によって優位性を高めると同時に、その言語によってアクセスされる「聖書の側」もその地位が高まりました。私の考えでは、文献学的には聖書は他の書物よりも優れているために広まったのではなく、言語アクセスの優位性故に広まったのだといえます。もし聖書の素晴らしさが現在と同じままで、しかしラテン語だけでしか書かれなかったら、その素晴らしさは広まらなかったことでしょう。
同じことがドキュメントとプログラミング言語と自然言語の関係にも当てはまります。いうまでもなくドキュメントは我々開発者が第一に参照すべき自然言語で書かれたテキストです。(もちろん自然言語という制限がなけれなばライブラリのソースそのものが特権的に参照されるべきテキストですが)つまりこれまでの例でいえば聖書に対応します。聖書が広まるためには、各自然言語からアクセスできる量が重要でした。つまり日本語で読めるようになれば、聖書の重要度はその分だけあがります。同様にドキュメントが日本語で読めるライブラリは、日本語で読める聖書と同じように、重要度は上がります。
さらに自然言語と聖書の関係よりも一つ係数が増えていて、つまりプログラミング言語が係数として増えているわけですが、ここで起きる現象は同様です。聖書をもとに書ける言語は強くなります。つまり日本語でドキュメントが読めることによって JavaScript は聖書に基づいた筆記が可能になり、その筆致こそが JavaScript を強くするのです。このような言語と書かれるテキスト、参照されるテキストの相互補強性に基づいて、我々はドキュメントを翻訳します。
こういった文字が、言語が、その独立性を持って、むしろ言語こそが第一の有機的な存在であるかのように全てを生成する現象についてはボルヘスを参照すべきでしょう。文学と JavaScript の相似形 / ボルヘス: バベルの図書館